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2014-09-27

梨木香歩『ピスタチオ』

梨木香歩『ピスタチオ』(筑摩書房、2010)を読了。
現代のライターの女性がアフリカで体験する霊的な?できごと。

ファンタジーや幻想小説と呼ぶのはちょっと違うかと思うけれど、シビアな現実と呪術的な日常が混じり合うアフリカの物語。

詳細はいずれサイトの方にアップ予定。

以下、内容にふれるので畳む。
 

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2014-09-27

『われ等が青春のブロードウエー』

『われ等が青春のブロードウエー』(ヘレーン・ハンフ著、桝井幹生訳、北斗書房、2007.12.20)

“Underfoot in Show Business”(1962) の翻訳。
同じ訳者の前訳書『Q先生の遺産』で「ショービジネスの下積み生活」と題されていたもの。
まさにそういう生活のことを綴った、『チャリング・クロス街84番地』の著者の前半生の自伝本。

この本も『Q~』同様、国会図書館からの取り寄せで、別の京都の出版社だがやはり自費出版らしいだけでなくこちらは非売品になっているのでそもそも流通していない。
『チャリング・クロス街~』以前なので、さらに読者は限定されそうだからか。
せっかくなので一緒に取り寄せしてもらったが、『Q~』ほどじっくり読む時間が取れなかったのでかなり斜め読み。
(ちなみに公立図書館の通常貸し出しは2週間だが、国会図書館からの取り寄せだと3週間取り置いておいてくれる。)

第1作だが、すでに軽妙な語り口は確立していて楽しく読める。
ヘレーン・ハンフのファンなら読んでも損はない気がする。内容にさほど興味がなくても。

…と思っていたら、一か所おもしろいところを見つけた。
映画会社で映画化できるかもしれない作品を探すために候補作品読みをするというバイトをしているくだり(第九章)。
あるときそのバイトで「三冊のばかでかいイギリスのペーパーバック」を読むはめになる。それは「じつに仰天すべき一五〇〇ページにも及ぶJ・R・R・トールキンのどろどろした神話だった」(笑)。
ヘレーン・ハンフはただでさえ小説が苦手な人なので、山ほど地名や人名の出てくるこの膨大な本を読んで要約を書くのは大変な苦行だったらしい。しかも三冊全部を一回の週末で! 「こんな本をもう五〇〇ページも読むくらいなら自殺するほうが明らかにまし」とまで書いている。そのとき出した請求書には一冊分の倍の「精神的拷問」の対価も要求したらしい(そして映画会社は払ってくれたとか)。確かに興味のない人に『指輪物語』はきついかな~。それもそんな短期間では。
年代がはっきり書いていなのだが、「まもなくアメリカでも出版されることになっている」とあるので、アメリカでハードカバー版が出る1954~1956年の前か。ペーパーバックが出るのは1965年なので原著出版年より後だし。その後アメリカでも爆発的ヒット作品になったことをどう思っていただろうか。
ところで引用してある冒頭部分が「ビブロ・バギンズ氏」になっているのはヘレーンの書き間違いか翻訳のミスか? 訳文自体はオリジナル訳になっているが、「トルキーンの『指輪の王』」とかじゃなくてちゃんと「トールキンの『指輪物語』」になっているので翻訳のミスなら惜しい。ヘレーン自身もトールキンの名前の綴りが間違っていないか気にしているので、もし原著のミスならヘレーンの疲れ具合を示すものとしておもしろいのだが。
ちなみに「冒頭」の一文にビルボの名前があることから察するに、ヘレーンは「序章」は飛ばしたらしい(笑)。

これでヘレーン・ハンフの著作は全部目を通したことになる。
ヘレーンは言わば『チャリング・クロス街~』の一発屋だが、読み物として楽しいので、『続・チャリング・クロス街84番地』も出たことだし、この第1作を含めもっと一般に読めるようになってくれることを希望する。
『レター・フロム・ニューヨーク』は中央公論社だったけど文庫にはなってないし(今は多分絶版)、『ニューヨーク、ニューヨーク』もサンリオ文庫だったから今はもう手に入らないしなあ。ただこのへんの一般出版社で出た本は、古書で出回っていたり図書館にはあったりするので、興味のある方は探してみられたい。
 

2014-09-23

『Q先生の遺産』

『Q先生の遺産』(ヘレーン・ハンフ著、桝井幹生訳、京都修学社、2005.12.20)読了。

(ちょっとミスの修正と加筆―2014.9.27)

“Q's legacy”(1985) の翻訳。
若い頃からこの本が出るまでの全生涯を扱った自伝。
以前「ヘレーンが師と仰ぐアーサー・キラー・クーチについてのエッセイらしい」と書いてしまったがちょっと違った。
とはいえこの本は「Q」ことクイラー=クーチとの「出会い」で始まり、「Q」の部屋の訪問が含まれる3回目の渡英部分を中心に、全体に「Q」へのオマージュがあるので、当たらずとは言え、か。

この本、アマゾンにあるけれど「現在お取り扱いできません」になっていて、出版社のサイトにも今はもう載っていない。
おそらく自費出版で、すでに品切れになっているのだと思われる。
近隣の図書館にもなくて、国会図書館から取り寄せてもらって、昼休みに毎日通って読んだ(国会図書館の本は最寄りの図書館まで取り寄せはできるけど館外貸し出しはしてくれないので)。
相変わらず軽妙で楽しいので、もっと手軽に読めたら良いのに、と思う。どこかが再版してくれないだろうか。

全生涯を扱っているが、『チャリング・クロス街84番地』で扱われた文通時代と最初のイギリス訪問については、以下の(2)(3)で語られているためこの本ではあまり書かれていない。先に(2)はもちろん、(3)を読んでおくとわかりやすい。
(1)を読んでいない者には前半生も興味深く読めるが、むしろ『チャリング・クロス街~』以降が気になる読者におすすめ。
後半は2~4回目のイギリス訪問が中心になっている。

2回目の訪問は、『チャリング・クロス街~』がBBCでドラマ化されることになり、その収録現場に招待されて。
小道具に使いたいからと言われて渋々送った蔵書が、思いもかけず見事に装丁し直されて使われているのに驚いている。ヘレーンは素直に感激したように書いているが、本持ちしては勝手に修復されて「自分の本」ではなくなってしまったみたいで一抹の寂しさや不満もなかったかなあと。いくら使い古されてよれよれでもさ…。
ヘレーンやフランク・ドエルの家族がそっくりで驚いたというが、役者さんの役作りってすごいんだなと思う。ヘレーンの方はわずかに一緒に過ごしているときの観察で、フランクの方は家族から話を聞いただけで。

そしてこの本でもっともページをとっているメインイベントは3回目の渡英(この章は細目次立てて欲しいぞ)。
『チャリング・クロス街~』のイギリスの愛読者から、縁の地を案内したいというファンレターが来るようになる。その中でも特に、ヘレーンの「師」である英文学の教授、アーサー・クイラー=クーチの伝記作者の妻が、管理しているクイラー=クーチの研究室を見せるという誘いを受けて。なのでこの回は自費での訪英である。
イギリスでの出版社ダーチ社の社長の不在中の母親宅に滞在し、そこでの生活模様をはさみながら各地を訪ねるさまが描かれる。イギリスに移住した旧友のもとを訪ねたり、イートン校の現役高校生の少年の案内を受けたり、迷子になる失敗談などを含めユーモラスに語られる。『釣魚大全』のアイザック・ウォールトンのウィンチェスター大聖堂のステンドグラスは、読者の寄付によって作られたものだそうだ。その他ジェイン・オースティンなどいろいろな人物の墓や縁の地を訪れている。最初の訪英で行きそこなったロンドン塔にも行っている。
クライマックスはケンブリッジ大学の「Q」の部屋訪問。クイラー=クーチは大学に1年しか行けなかったヘレーンが、英文学を独学する際の教科書としての講義録の著者で、特別の思い入れのある人物である。ヘレーンの感無量ぶりが伝わってくるさまが、この回の充実した訪問の掉尾を飾る。しかし大学ってこういう部屋をどのくらいとっておくのだろうか。ファンにはこたえられない「聖地」だが、ある程度有名人の部屋をみんなとっておいたらそのうち部屋なくならないか?
クイラー=クーチの名は、ミステリ作家としてしか知らなかったけど、学者だったんだよな。

4回目は『チャリング・クロス街~』がロンドンで舞台化され、その上演を観るために招待されて。
劇作家としては成功できなかったヘレーンだが、自分の脚本ではないとはいえ、やはり嬉しさも一入のようだ。
脚本家や演出家の人たちも個性的で楽しい。

マークス書店の経営者の息子夫婦とドエル家の人々はこの本のイギリス訪問にも出てくるが、この本や(3)の訳者もまえがき等でふれているように、最初の訪英で大きな役割を果たし印象的だった「大佐」や「P・B」がまったく出てこないのが気になる。
あと(3)の口絵写真にあったエリザベス皇太后との邂逅はいつ? 4回目の訪英時の会員制クラブで見かけた、特に誰とは言及していない、いわくあり気な優雅な「年配の貴婦人」がもしかしてそう? それとも2回目のBBC撮影のときか3回目の文学探訪のときのどこかか。
ヘレーンは書くことを絞って書いているようなので、本に出てこなかったこともいろいろあるのだろう。誰か評伝書いてくれないかな。

この本の訳者はすでに定年を迎えられた年配の方なのだが、訳文で「マジ」とか出てくるのがちょっと気にかかった。著者の文章が軽くてそんな感じなのかもしれないが。あと「うるおぼえ」ていうのがあったような…。
訳者が取材旅行で撮影された写真がいろいろ挿入されているのは、雰囲気がわかって大変良いと思う。国会図書館なのでカバーがはずされていたのは残念だが、アマゾンで書影を見ることができる。ケンブリッジ大学の「Q」のジーザス・カレッジの写真である。

あまり手に取ることができないと思われるので、少々長めに紹介した。


改めて、ヘレーン・ハンフ(Helene Hanff、1916-1997)の著書を原著刊行順に並べておく。

(1)“Underfoot in Show Business”(1962)
『われ等が青春のブロードウエー』(桝井幹生訳、北斗書房、2007.12)
 ショービジネス界の下積み生活を描いた前半生の自伝。

(2)“84, Charing Cross Road”(1970)
『チャリング・クロス街84番地―書物を愛する人のための本』(編著、江藤淳訳、中公文庫、1984.10)
 (←講談社(1980.4)←日本リーダーズダイジェスト社(1972.4))
 物書きの米国人女性と、古書店員の英国人男性との往復書簡集。

(3)“The Duchess of Bloomsbury Street”(1973)
『続・チャリング・クロス街84番地―憧れの倫敦を巡る旅』(恒松郁生訳、雄山閣、2013.12)。
 出版社の招待で初めてイギリスを訪れたときの旅行記本。感想はこちら

(4)“Apple of My Eye”(1977)
『ニューヨーク、ニューヨーク―ニューヨークっ子のN.Y.案内』(犬養智子訳、サンリオ文庫、1985.9)
 ニューヨークの楽しいどたばた案内記。

(5)“Q's legacy”(1985)
『Q先生の遺産』(桝井幹生訳、京都修学社、2005.12)
 渡英記を中心とした全生涯の自伝。

(6)“Letter from New York”(1992)
『レター・フロム・ニューヨーク』(キャシー・圭子・デクート訳、中央公論社、1995.12)
 ニューヨークの日常生活を綴った本。

(おまけ)
『ヘレーン・ハンフ論纂―「ブロードウェイの落ちこぼれ」物語』(芳賀馨編、開文堂出版、1987.3.20)
 複数の日本人執筆者によるヘレーン・ハンフについての論文・エッセイ集。感想はこちら
 

2014-09-20

本家サイト更新―海外編

サイト更新記事ばかりふえるのも何なので、内容を追加した上で日付を修正することにした。
9/1に更新は「一年半ぶり」と書いたが「二年半ぶり」だった…

(2014.09.20)
本家サイトの「私的 児童文学作家事典〔海外編〕」のページの「タ行」「ナ行」更新。
児童書と言えるかどうか、と追加を保留にしていたものなども。再話や絵本で「翻訳」と言えるかどうか悩むものもまだあるんだけど、どうしようかなあ。
物故判明は六人。カ行・サ行にも追加判明四人。

さて、山場のハ行だー。
 

(2014.09.14)
本家サイトの「私的 児童文学作家事典〔海外編〕」のページの「サ行」更新。
今回も少なめ。ずいぶん前に出ていたけど追加しそこなっていたものも。
物故判明は一人。洋書資料ならぬ英文wiki参照。そろそろwikiを参考資料にあげるべきか?

グリムの全集が出ていたのでそれも追加。著者欄に名前が入っていないと著者からのリンクで引っかからないんだよね、アマゾン。
同形式のアンデルセンは著者入っていたのにな…。

この連休中にハ行の前まで行けるか? ハ行は他のところの3倍くらいあるからなー。
 

(2014.9.8)
本家サイトの「私的 児童文学作家事典〔海外編〕」のページの「カ行」更新。
ア行より少なかったので割と早くに更新済。
物故判明も一人。

アマゾンへのリンクも修正・追加してるけど、ときどき全然違う本の画像がついてたり、他の本の参考には出てくるのにその本のタイトルや著者で引いても出てこないものがあったりして、困ることも。
まあ大量のデータを扱ってるから多少のミスやバグは仕方ないのか…。
以前確かあったはず…という本がなくなるのは、品切れになって出版社が引き上げてくれと言ったりするのか? 単に「現在お取り扱いできません」になってるものや提携古書店からの中古品のみになってるのもあるけれど。

さて次はいつになるか。
 

(2014.9.6)
一年半ぶりに本家サイトの「私的 児童文学作家事典〔海外編〕」のページの更新開始。まずは「ア行」。
書名索引や訳者名索引も追加反映あるから結構面倒…。まあ好きでやってることだから。
もう亡くなった作家の人でも新刊や新版が出るのは喜ばしいことなんだしね。

日本編と違って新しく読んだものはないんだけど、ア行だけで4人物故判明。
前も書いたけど、作家情報がないものは以前は図書館に「Something about the Author」をひっくり返しに行ったりしたものだけど、便利になったものだ。

<エイラ>完結したんだな。出版社変わってから読んでないけど、無事完結はめでたい。
オルコットの作品は同じ作品でも邦題が全然違って同定が大変だったんだけど、最近出た講談社の青い鳥文庫の「若草物語」連作の2作目の原題がまだ確認できてないので追加は先送り。ネット上での情報でわかると思ったんだけどちょっと変なところがあるので現物見ないと。多分大丈夫だろうけど~。
そして岩波がついにLittle Womenを『若草物語』の題で出したな…ずっと『四人の姉妹』だったのに。どっちも直訳じゃないけどね。

アマゾンへのリンクもいくつか地味に修正・追加。
絶版・品切れの本でもリンクしている古本屋のサイトから入ったりするし。

さてこのペースで最後まで終わるのにどのくらいかかるやら。
 

2014-09-14

テンプレート変更

テンプレ春秋バージョンに変更。
九月に入って突然涼しくなったけど、昼間はまだ暑い日も。
 

2014-09-07

『石井桃子のことば』

『石井桃子のことば』(新潮社、2014.5)読了。
日本の戦後児童文学界を翻訳者・編集者・作家としてリードした石井桃子の言葉を集めたビジュアル本。

著作その他から本人と関係者の言葉を集め、岩波少年文庫や縁の地の風景などの写真も多数。
私の世代には「恩人」である人のいろいろが興味深い。
読んでない自伝的作品『幼ものがたり』と『幻の朱い実』も読んでみるかなあ。
 

2014-09-01

市川春子『宝石の国』3巻

市川春子『宝石の国』3巻(アフタヌーンKC、2014.8.22)。
講談社発行。月刊誌「アフタヌーン」連載中。

「月人」と戦う不死の「宝石」たちの物語。
大部分の人たちが冬眠して、新顔と主人公と先生の主に三人の物語。
今回はちょっと泣けるぜ…。

以下、内容にふれるので畳む。
 

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2014-09-01

本家サイト更新

一年半ぶりに本家サイトを更新。
といっても日本編の読んだ分二人だけなので、ウォーミングアップ程度。
本番の海外編の新刊更新はまだこれから~

作家の方以外に、全然メンテしてなかった画家の方にも随分鬼籍に入られていた方が。私が子どもの頃に親しんだ本の方々が多いので当然とはいえ…合掌。

しかし最近は児童文学関係読んでないわ。
荻原さんのは完結して文庫化されてからだし、梨木さんのは年に一冊くらいしか出ないのにこの五年分新刊未読たまってるしなあ。
まあぼちぼちやります。
 

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